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2004年02月29日

「善意」という問題

Iraq

今週の「マル激トークオンデマンド」のゲストは、前回の出演で「イラクはアメリカ軍を歓迎している」、「イラクの治安は悪くない」と発言して、宮台、神保両名を絶句させた、ケン・ジョセフ氏。今回も驚くべき証言を連発。

(1)サマワの治安は非常に悪い(現地人のドライバーも行きたがらない)。その原因は自衛隊という「軍隊」がやってきたこと。そういう「軍隊」を標的とするテロリストが海外から流入してくることによって、サマワはテロの温床になりつつある。

(2)従ってサマワの人たちは自衛隊という「軍隊」を全く歓迎していない。彼らが来ることで以前は平和だった町の治安が急激に悪化したので、逆に「迷惑に」思っている。テレビカメラの前で「自衛隊を歓迎している」とコメントする人たちは、お金を貰っている部族長から「そう言え」と脅されているだけ。

(3)「水」には困っていない。各家庭で蛇口からきちんと出ている(ジョセフさんはつい先日サマワでお茶を出されて飲んできた)。また雇用についても、「13万人」の町で「600人」程度なので、ほとんど歓心を引いていない。

(4)日本は、サマワで局地的な支援を行うよりも、政治システム、憲法を含めた制度設計のような全体的な支援をすべきだし、そういったことこそがまさに求められている。

小泉、石破ら派兵推進派は、憲法違反やイラク攻撃の大義の問題では逃げの一手を打ちながら、最後には「困っているサマワの人たちに対して日本は何もしなくて良いというのか」というのを殺し文句として用いてきた。「何もしない」よりは「何かした方がいい」、これは「善意」だ。なのに派兵に反対する人たちはその「善意」を否定するというのか、という議論だ。

けれども「善意」というのは難しい問題を孕む。ジョセフさんが例に挙げるように阪神大震災では、「善意」で駆け付けた素人のボランティアがかえって被災者の負担になったケースも少なくなかった。「善意」だから何でも許される、というのは自分勝手で傲慢なロジックでしかない。

そしてジョセフさんの言うことが正しければ日本はまさにその「善意の押し売り」「ありがた迷惑」を行っていることなる。自衛隊という「軍隊」では「軍隊であるが故に」まともな支援活動は出来ないどころか、テロリストを呼び寄せる迷惑な存在でしかないというのだから。もちろん僕は今回の自衛隊派兵が純粋に「善意」に基づくものであったかどうかさえも疑わしいと思っている。(本当に、日本政府はイラクにどういったニーズがあるかきちんと調査し、その上で、そのニーズは自衛隊でしか満たし得ないとして派兵を決めたのだろうか。)

さらに僕が気になるのは、「サマワは自衛隊の支援を欲している」というストーリーがどのような意味を持つかだ。

「サマワを支援してあげたい」という自衛隊の「善意」と「サマワの人たちも自衛隊による支援を望んでいる」という「善意」を欲する人々の存在。そこには幸福な需要と供給の一致がある。この構図において自衛隊を狙うテロリストは、その幸福を邪魔する=善意を否定する「理不尽な悪」として表象せざるをえない。

もしそこで自衛隊員が何人か犠牲になったとしよう。派兵推進派は「我々は善意で自衛隊員を送り、サマワもそれを歓迎してくれているのに、それを標的にするとは何事か」→「テロリストには断固たる態度を取るべし」→「そもそも理不尽なテロによる犠牲を防げなかったのは憲法九条が自衛隊の武装、武器使用を制限したせいだ」→「従って、犠牲者の志を無にしない為にも、日本の善意を貫徹する為にも憲法を改正せよ」、おそらくこのような主張を行うのではないだろうか。

けれども繰り返すように、ジョセフさんの言うことが正しく、「サマワは自衛隊の支援を欲している」という前提が大間違いであれば、自衛隊派兵は全くの「ムダ」であり(税金上も!)、イラク(サマワ)のことを思うなら派兵してはならないことになる(もっと言えば即座に撤退すべき)。にもかかわらず、その上で派兵されて死者が出たならば、それはもう文字通りの犬死でしかない。そして、彼らを犬死させた責任は、自衛隊の最高司令官であり、派兵を命じた小泉純一郎にあるというより他は無く、彼の責任をテロリストたちや憲法九条に転嫁することは絶対に許されない。

とりあえず今週の「マル激」は「もう派兵は決まったんだから仕方ないじゃないか」と言う全ての人たちに聞いてもらいたい。もしかしたら僕たちはとんでもない勘違いをしているかもしれないのだ。

(追記)
Fujii牧師の独り言の「マル激トークオンデマンド」についてのEntryをリンク。今週の「マル激」の内容が、僕のEntryより正確に要約されてあります。「Videonews」会員でない人は御覧になってみてはいかがでしょうか。

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