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2004年04月13日

自己責任?

Iraq

「自己責任」、「自業自得」と言い立てる人たちは、一体何を言いたいのだろうか?もしかして、「危険を承知していったんだから、政府は救出しなくていい」とか、そこまでいかなくとも「救出してやることを、ありがたく思え」とか、そんなことを言いたいのだろうか?

この際はっきりさせておきたい。

「国、政府が、国民の生命の安全を確保することは、無条件の義務である」。

ポイントは「無条件」というところだ。国家は自国民の生命の安全確保に関して、一切厭うてはならないし、拒否することも出来ない。それが近代国家の大原則なのだ。もちろん危機に瀕している国民がいかなる思想信条(例えば政府の政策に反対だとか)を有していようと、それは完全に無関係だ。

もしそれを国家が怠るのならば、国家は国民に基本的人権のひとつとして新たに「自力救済(仇討ち等に代表されるような警察や司法に依らない私的制裁、自力での問題処理)」を認めなければならない。けれども「自力救済」が認められる国家はおよそ国家足りえず(全ての国民が互いに自力救済を行ったとしたら、それはホッブスの言う「万人の万人に対する闘争」=「自然状態」であり、そこでは国家という存在は無きに等しい)、従って「自己責任」を過度に押し付ける国家は、自らの存在そのものの否定を主張していることになる。

僕は前回のEntryで、今回イラクで人質になった人たちを「物見遊山の旅行者とは区別すべき」と書いたが、もちろん例え「物見遊山の旅行者であっても」、国家の救出義務にはいささかも、差別はありえない。

従って「家族の人たちには感謝の気持ちが見えない」といって非難したりするのは完全に的外れ、ということになる(ちなみに、何故こういった非難が、この国においてある程度の広範な共感を呼んでしまうのか、は面白い問題だとは思う)。そもそも政府はまだ人質の救出に成功したわけでもなんでもない。なぜ「救出活動を行っている」というだけで感謝を示さなければならないのか(別に示すのは自由だけれども、それを全ての人に強要するのは端的に誤り)*1。

そして、その救出活動が、政府の過ちによってもしも失敗に終わればその責任は厳しく問われなければならない。そのような義務を国家は負っている。その義務を負って初めて、国家は、国民に対して自力救済を禁止する資格を得、国家となりうるのである。

僕が小泉内閣を認めない、と言ったのはそれが、政治家として最も基本的な認識すら持たない人たちによって構成された、「欠格」内閣だからだ。

*1 政府や外務省の人たちは、今メチャクチャ忙しくて大変かもしれないけど、それがあなたたちのお仕事です。愚痴は家に帰ってから、独り言程度で済ませておきましょう。頑張ってね。

(追記)
ジャーナリスト江川紹子さんのサイト「江川紹子ジャーナル」より。
いわゆる自己責任論について」をリンク。

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Comment (10)

Ric:

ギムだから感謝しなくてもよいというのは、どういう理屈なのでしょうか。
ギムであることと、それを履行した際に感謝しなければならないかとは全く次元のことなることだと思いますが。

deadletter:

理屈はそのまま、お読みになった通りです。というか、おっしゃられている意味が良く分かりません。

義務であることと、感謝しなければならないかどうかはまさに全く別問題です。僕はその事を述べているのです。

感謝をしても構わないけれども、強要するのは間違っている、それは自由であり、政府の義務の履行とは何の関係もないし、感謝されないからといって義務の履行が軽減されるとか免除されるわけでは全くないということです。

TAS:

あなたの論理に従うと、人質・あるいはその関係者が

「政府の行動には感謝していないが、危険地帯で拘束されても助けてくれることは分かった。これからもどんどん利用したいと思う」

と言い放ったとしても、国民は黙って見てろ、国家の義務なんだから非難するのは筋違い、と言うことになりませんか?

世間の「自己責任」「自業自得」という感情論を、「国家の義務履行に対する意見」であると勝手に読み替えている時点で、相当無理のある文章だと思うのですが。

deadletter:

例えば市役所で住民票や印鑑証明をもらう時には、感謝云々は全く問題にされません。仮にその日混んでいて市役所の人間が忙しくても、彼が迷惑そうに、チンタラやっていれば不快感を抱かないでしょうか。

例えばピッキング多発地域でカギを一つしかかけていなくて盗難に遭った時、「気をつけろ、と日ごろ言っているんだから自己責任だ」と警察に被害届を出しに行って開口一番に言われたら、どうでしょうか。不快感を抱かないでしょうか。そこでも感謝云々が問題にされますか?

なぜ外務省の仕事だけが特別視されなければならないのですか?

そもそも「危険地帯で拘束されても助けてくれることが分かった」と言う時点で変だと思いますよ。それは今初めて「分かる」ようなことではなく、元々そういうものなので。日ごろ外務省に在外邦人保護意識がなさ過ぎるので(在外大使館の無能さが象徴的ですが)、勘違いされる人が多いのかもしれませんが。

それから世間の人は政府の立場と自己の立場とを同一化させすぎていると思いますよ。政府はそれは本音では迷惑でしょうね。誰でも仕事は少ないに越したことはありませんし。でも僕たちが彼らに過剰に共感するのはおかしい。共感を強要するのはもっとおかしい。

ちなみに今回の反発が「とにかく人質になったあの三人が気に食わないんだ!」というまさに「感情論」なら、回りくどく「自己責任」などと(まるで一見正当性があるかのように)言わなければ良いのでは、と思います。

TAS:

彼らが「自業自得」「自己責任」の非難を浴びせられることになった原因は、

テロの緊張が高まっている非常にデリケートな時期に拘束され、国に決断を強いるような交渉カードとして用いられることが誰の目にも明らかだったから

にも関わらず、家族会が「自衛隊を撤退させないつもりなのか」「見殺しにするつもりか」「自衛隊とアメリカ軍(?)は撤退すべきだ」などと無茶な主張を続けたから

だったように思います。感情論と言っても、「単に気にくわない」みたいな単純な話ではないでしょう。また「世間の人は政府の立場と自己の立場とを同一化させすぎている」とおっしゃいますが、私はそうは思いません。国が被る不利益は国民の不利益になり得るわけですし、まして今回は明確に「人質」として扱われることが最初の段階から分かっていたケースです。自分たちにとって具体的な被害になりうると考えるのが一般的な国民のコスト感覚ではないでしょうか?あなたの考えが一般的であるとは思えませんし、主張に説得力があるとも思えません。

冒頭の「市役所」と「警察」のたとえ話は、たとえが大きくズレているように思います。

大雨・洪水警報を無視して中州に取り残されたキャンプ客を助けに行く(http://ww5.tiki.ne.jp/~hironaka3/page7-5.htm)のは消防署の義務ですが、それを受けて世論が「自業自得」「自己責任」に流れることを、あなたは誤りであると考えますか?

「誤りである」と言うのであれば、そういう方の書いた文章と言うことで納得できます。「それとこれとは話が違う」と言うのであれば、説明して頂ければありがたく思います。

deadletter:

僕にはそもそも「自己責任」と「自業自得」と批判することが具体的に何を意味しているのかが分かりません。それが「彼らは見殺しにされて然るべき」という意味を伴うものであれば、それは「ありえない」と言っているだけです。

あなたの大雨によるキャンプ客の遭難の例ですが、それも僕の挙げた例とほとんど差が無いと思います。どこに「大きなズレ」があるのか全く分かりません。世論がマスコミの後知恵を受けて「そんなミスしやがって、自業自得だ」と考えるのは自由ですが、それは自分が後々もし同じような状況に置かれたらそんなミスはしないぞ、と個人的に心がければ良いのです。

ちなみにヒステリックに「自業自得な奴を救うのは税金の無駄使いだ」とまで主張する人がいますが、あまり賢い人の言うこととは僕には思えません。自分が他の状況では「自業自得だ」と人から責められるような馬鹿なミスを犯して行政の世話にならないとも限らないのですから。僕たちは自分の利用するサービスだけに税金を払うわけではありません。孫正義は生活保護のサービスを受ける機会は一生無いと思われますが、彼が「そもそもそのようになったのは本人の努力不足(自業自得)であり、僕は利用しないからムダだ」と言って税金の支払いを拒否することは出来ません。その意味で税金は自分で好きなものに掛ける保険と全く異なるのです。

それがもし嫌ならアナーキストとして生きれば良いでしょう。ただし僕は嫌ですし、多くの人にとってもそのような社会が居心地の良いものであるとは到底思えませんが。

誤解なきようにお願いしたいのですが、何に税金を使うか、何を公的サービスとするかに関しては議論があって当然です。ご存知のように国会はそれを決めることが仕事なわけですね。

ちなみに僕は今回の三人のような人たちには税金を使うべきと思っています。小泉純一郎は自衛隊派兵を正当化する際、憲法前文の「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」という文面を使いましたが、その文脈からすれば彼らはリスペクトされこそすれ、批判する資格は小泉純一郎にはありません。また彼はメルマガで「民間による支援」を推奨していますし、外務省も退避勧告を出しながらイラクで活動するNGOに資金援助を行っています。二枚舌ここに極まれりってやつですね。

長くなりましたがもう少しお付き合い下さい。「政府との同一化」の問題ですが、残念ながらあなたの文章にはまさにその影が色濃く出ています。

「国に(厳しい?)決断を強いる」ことを批判されているようですが、別に彼らを楽にさせる義務など国民は負っていません。彼らには今回の件はキツかったでしょうが、僕にはまさに自業自得のように思えます。このようなことは予想されたことでありながら(NGOは自衛隊派兵の際何度もこのようなケースを警告していました)が、「自力救済型社会」というEntryでリンクした逃避日記によると、外務省の退避勧告は2003年の2月から更新されていません。従って自ら厳しい状況に自分たちを追い込んだとしか思えません。なぜ政府の立場を慮る必要があるのでしょうか。

「国(政府)が被る不利益は国民の不利益になり得る」のはそうですが、必ずしも「国(政府)の利益が国民の利益に繋がる」わけではありません。政府が被る不利益がどのようなもので、それが本当に国民にとってマイナスになるのかはそれこそ大いに議論されるべき事柄であって、全く自明ではありません。自明ではないものにコスト意識が働く、と言われても、その計算が正しいかどうか分からないので意味がないというしかありません。

それから自衛隊撤退論は「無茶」だというお話についても、僕には家族がそういう話をすることに反発する感情が理解できません。「3日後には焼き殺す」と言われて「自己責任だからどのような結果になっても仕方ない」と冷静に答えられる家族の方が不気味です。ちなみに家族が国に対して政治的要求をすることが不遜だというちょっとビックリするような意見がありますが、北朝鮮による拉致問題で家族会が「北朝鮮に経済制裁をせよ」という要求することを、不遜だと言う人を聞いたことがないのでそこにどういう差異があるのか首を傾げています。

最後に僕の議論についてですが、一般的でないという批判には「ああそうですか」という風にお答えせざるを得ません。僕は原則論を踏まえようと言っているだけであって、もしそれが一般的でないのなら、不遜ととられても構わないのですが、一般的意見を言う人たちが原則論を踏まえない「感情論」を唱えているだけなのではないですか。そもそも一般的な意見をなぞるつもりで僕はBlogをやっていません。説得力が無い、についても人それぞれなので(ちなみにこのEntryは、言及して頂いているサイトを見る限りは意外に好評でした)やはり「ああそうですか」という以外、何ともコメントしようがありません。

TAS:

レスありがとうございます。長いやり取りになってしまいましたが、もう少しだけお付き合い下さい。私と貴方の立ち位置を、最終的に確かめたいからです。それが分かれば私は満足ですし、私以外の読者にも役に立つ情報になると考えます。宜しくお願いします。

前コメント迄の貴方の論旨は、

・用事が出来たので市役所に行って印鑑証明を貰う。
・泥棒に入られたので警察に被害届を出す。

これらの業務(=義務)を市役所や警察が当然果たすように、またそこに感謝の多寡が考慮されることがないように、外務省も特別扱いされる必要はない。よって拘束された三邦人が「政府や外務省に感謝しない」からと言って「自業自得」「自己責任」と喚き立てることは意味不明である。そう言うものだと理解しています。

その例えについて私が「ズレていると思う」と書いたのは、

・市役所や警察に用事が出来て「自業自得」「自己責任」と非難されることは余り無い
・外務省も同じこと
・だから三邦人に対して「自業自得」「自己責任」と非難するのは変

この論理に無理を感じたこと、そもそも「自業自得」「自己責任」と言う非難が起こる論拠を取り違えているのでは無いかと考えたからです。だからより近いと思う「中州のキャンプ客」の例を挙げました。

しかし貴方は

・用事が出来たので市役所に行って印鑑証明を貰う。
・泥棒に入られたので警察に被害届を出す。
・避難勧告を無視してキャンプしていたら中州に取り残されたので消防に救助に来て貰う。
・退避勧告を無視してイラクを歩き回っていたら拘束されたので外務省に動いて貰う。

これら四例の間にほとんど差が認められず、いずれの例に関しても等しく「自業自得」「自己責任」と批判することに意味が見出せないと考えている。私の解釈に誤解があるようでしたら、ご指摘下さい。

私は貴方と同様に、<(「自己責任」「自業自得」と批判することが)「彼らは見殺しにされて然るべき」という意味を伴うものであれば、それは「ありえない」>と考えています。海外で邦人の拘束事件が起これば、どんな理由であれ外務省は動くべきだし、可能な限りの力を尽くすべきです。結果として選び取れる選択肢がどんなものでも、前提は必ずそこにあるべきです。この点に関しては全く同意見です。

しかし、こうしたケースが起こった場合、<「自己責任」「自業自得」と批判することが具体的に何を意味しているのか>、私には分かります。「こういう事が続くと非常に困る」「気をつけて欲しい」「事の重大さを自覚して欲しい」「責任が取れない事態が想定されるなら、行かないで欲しい」。そう言うことだと思います。

貴方はそうした発想が理解できないと言うことでしょうか。引き続きこうしたケースが乱発しても、「自分は気をつけるから別にいい」と心の中で思い、「小泉内閣の責任で、自業自得だ、外務省がんばって」で済ませてしまうのでしょうか。これは冗談ですが、どこかの武装グループに「北海道と四国を割譲してくれないと拘束した邦人1000人を順番に殺します」とか言い出されたら、あなたは困りませんか?

また「二枚舌」とおっしゃいますが、退避勧告を出しながら資金援助を行なうことが「二枚舌」と言う論理はよく分かりません。NGOが退避勧告を無視して危険地帯に留まるのは、政府による資金援助と小泉の「民間による支援を推奨」という方針が原因ですか?NGOは自発的な非政府組織ですよね?資金援助が年毎なのか月毎なのか私は知りませんが、退避勧告を出す時はそれをストップする、なんてことをしても、何かの効果を生むとは思えません。多分NGOも困ると思います。政権が変わっても二枚舌は続くでしょうし、調べていませんが多くの国は同様に二枚舌をやっていると思います。

自衛隊派遣の是非は難しい問題なので、議論は控えたいと思います。その是非についての私の立場は示しません。しかしその是非や、可能か不可能かと言う問題を別にしても、あのタイミングで家族会が主張できたのは「自衛隊の撤退」以外に無かったはずですし、また対外戦略的にも(家族の心情や人質の安否を度外視したとしても)唯一正しい選択肢だったと思っています。被害者の親族が「死んでもいいです。構いません。自衛隊は残ってください」なんて言い出したら、世界中に「日本は超強硬路線だ」とアピールしてしまうことになりますし、あの選択は間違いなく正しかったでしょう。が、一方で国内世論のケアには大失敗した・・・と私は思うのですが、貴方は問題なかったと考えている。

私の認識に誤りや反論等あればご指摘お願いします。なければスルーして頂いて結構です。叩き合いにならずに議論できる場所は近頃なかったので、思わず長文になってしまいました・・・。

それでは失礼します。

deadletter:

4つの例は同じ、と言ったのはそれが国家の果たすべき義務(仕事、役割)ということには違いは無いという意味です。これを果たすことについて「寝ずの仕事が増えて迷惑」だのなんだのと主張することはまさに「天に唾する」ようなものであって、まともな政府の見解ではありえません。

それから「(政府が助けてくれることを当てにして)こうしたケースが乱発」する懸念については「杞憂だ」と言っておきたいと思います。

仮に「政府が最後は何とかしてくれるから、自分は好き勝手に何でも出来る」と考える人がいたとしましょう。その人は、どのような危ない橋を渡ろうとも最後は政府が何とかしてくれる、つまり政府をある種の「超人」と見なしていることになります。しかしもちろんですが、どのような理想的な政府であっても、何でも解決できる万能さなど到底持ち合わせていません。また助かるにはある程度の「運」も必要でしょう(今回の事件も多分に運が関係したと思います)。

「(外務省は)可能な限りの力を尽くすべき」というのはまさにその通りですが、限界以上のサポートを期待するとすればタダのアホです(というかそんな人はとっくに「あの世往き」です)。しかも海外在留経験のある者にとって、日本の外務省がどれほど役に立たない無能集団であるかは、ほとんど常識です(本来は近代国家としてこんな異常な現状が許されていて良いはずもないのですが)。従って政府という後ろ盾を当てにして無謀なことをする日本人が今後特に増えるとは思えません。今まで多かったとも思えません。

結局、自己責任とは「政府が、救出活動を怠るか、または救出活動の過程で重大なミスを犯した事が原因で重大な被害を被ったケース以外は、犯人以外の誰も恨んではいけない」という意味に過ぎません。

「四国割譲」を要求されれば確かに困るでしょうね。ただ実現不可能な要求(犯人たちは四国をもらう約束をとりつけたとしてそれからどうするつもりでしょう?)なので、「条件の変更・緩和」、「人質解放へ向けての説得」等の交渉が政府に課せられた仕事になるでしょう。そういったことさえも嫌で迷惑だから、そもそも渡航の自由を禁じるなどというのなら彼らは政府の仕事を辞めればいいのです。替わりはいくらでもいます。ちなみに「テロに屈するべきではない(だから交渉も無用)」というのもナンセンスです。それはしょせん一つの価値観に過ぎないからです。政府が特定の価値観を、国民に強要するのは許されません。

「テロに屈すると他の国民にも被害が広がる」という話も眉唾物だと思います。ダッカ事件以降ハイジャックはもちろん、日本人誘拐事件が「頻発した」という事実はありません。過剰に恐怖を煽っておいて価値観に過ぎないものをさも事実であるかのように喧伝するのは不誠実です(M.ムーアの「ボーリング・フォー・コロンバイン」はまさにそれをテーマにしていました)。

「二枚舌」のところで言いたかったのは、政府が特に今回のような事件を予想して積極的に動いていた、というのは全くの過大評価だ、ということです。彼らは「これからは自衛隊の出番であり、民間人は危険だから引っ込んでいろ」という方針を強く打ち出してはいませんでした。寧ろ「自衛隊もイラクに行かせて下さい」という方が実態に近いと思います。それを今更「言わんこっちゃない」などというのは単なる責任逃れの方便です。

それから「困るから行って欲しくない」という気持ちについてですが、それは常に「誰にとって」ということが問題になります。「政府にとって」というのは何の拘束力も持ちません。「家族や友人にとって」ということならば非常に分かります。つまり重要なことは「家族的共同体」と「国家」はきちんと区別されるべきものだ、ということです。「国家」とは基本的人権の保障と国民の福祉(Welfare)の向上の為に人為的に作られた、いわば「フィクション」ですから。国家が人の生き方に口を出すことはありえないことです。

政府がすべきなのは「自分の信念に殉ずる人たちが少なからずいる」といったことを前提にした上での「サポート」です。今回の件で言えば外務省は日々変化するイラク国内の情勢・世論動向をきちんと把握し、頻繁に情報提供すべきでしたし、部族長・宗教関係者等とのパイプも日ごろから作っておくべきでした。また、民間人に最低限の自己防衛術を身に付けさせるために自衛隊と共同訓練できる場を提供するとかも良いかも知れません。そういうこともろくにせずに政府が一方的に「迷惑だ」や「反省しろ」と暴言を吐き、一部のメディアが無批判にそれに乗ったことに対して僕は寒々とした思いを禁じえません。

また長くなってしまいました。TASさんの求めるレベルに近いものであれば良いのですが。それから蛇足ですが昨日買って来て読んだ本がなかなか素晴らしかったので紹介させて頂きます。長谷部恭男「憲法と平和を問い直す」(ちくま新書)です。ちなみにもし手に取られたらまず「あとがき」を読んで、買うかどうか判断なさることを勧めます。

はじめまして。
4月19日に「パウエル国務長官の発言について」というページからリンクをはった、てるてるです。
http://terutell.at.webry.info/200404/article_4.html

「『家族的共同体』と『国家』はきちんと区別されるべきものだ」という御意見はおもしろいですね。

今回の人質いじめは、「お上に盾突く」から非難する人と、「世間様に逆らった」から非難する
人と、両方いて、またその二つが重なり合っている人もたくさんいたように思います。

オーストラリアの人道支援活動家も、イラクで誘拐されて解放された後、帰国すると、首相と外相から非難されています。

でも、一般市民が彼女に「お詫びしなさい」ということはないようです。

また、カナダの人道支援活動家は、帰国すると英雄扱いです。

この3例を比較してみるとおもしろいと思います。

オーストラリアの人質の場合
http://terutell.at.webry.info/200404/article_20.html

Donnaと菜穂子
http://terutell.at.webry.info/200404/article_21.html

「カナダ首相『何でもする』人質家族に電話で約束」(カナダ放送協会)(2)
http://terutell.at.webry.info/200404/article_18.html

deadletter:

てるてるさん。

Comment&Linkどもです。
オーストラリアとカナダではそんな感じだったんですね…知りませんでした。確かに興味深いですね。阿部謹也の「世間とは何か」でも読み返そうかなあ、とふと思ってしまいました。

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