イラク問題、あるいはそれ以外の日本の外交問題を語る場合でさえ「親米か/反米か」という切り口、議論の枠組みがデフォルトになりつつあるように見える。
ただ最近僕にはこれが鬱陶しく思えてならない。ものごとの見方・論じる枠組みは本来多様であって、「親米/反米」という枠組みはその中から恣意的に選ばれたものの内の一つでしかない。それに「親米」と「反米」の間には極めて広いグレーゾーンがあるし、いや、そもそも「何をもって親米とするのか」という定義の問題もある。
確かにこの枠組みはものごとを整理する際、相対的に便利で有効だったかもしれない。でもそのあり方はいまや倒錯しているのではないか。便利だから用いるのではなく、デフォルトだから使わざるをえないというように。
そういった問題点がスルーされ、「反米か/親米か」という枠組みについて、それがデフォルトであるだけにとどまらず、その存立根拠の恣意性すら忘却された時、それはただ単に「敵/味方」を創り出す際の「踏絵」となるしかない。そのように枠組みが機能する時、そこはもはや「議論」ではなく、「敵/味方」を峻別し、「審問」する場となりかねないのだ。
更にマズイのはこの「反米/親米」という枠組みに、最近では「理想主義か/現実主義か」「国益否定的か/国益追求的か」という、本来それぞれ全く独立で、無関係であるはずの枠組みが無造作に重ね合わされてしまっていることだ。
周知のようにそれは「反米=理想主義=国益否定的/親米=現実主義的=国益追求的」というように重ね合わされるわけなのだけれども、よく考えれば、これまたどこに(どこから)ツッコミを入れるべきか困るくらい、雑で無意味な枠組みである。こんなものを強制的に受け入れさせられ、「さあご注文はどっち」と言われても、勘弁してくれとしか言いようがない。
例えば後者の立場「親米=現実主義的=国益追求的」の代表的論者としては、岡崎久彦氏みたいな人がいる。彼は「日米関係が悪化すれば日本に繁栄はない」などと主張している。
が、この繁栄を「経済的繁栄」の意味でとれば、彼の主張はただ単に「初歩的」な間違い、DQNレベルでしかない。例えば日中関係は小泉の靖国参拝問題もあり政治的にしっくりいっていないし、強固な信頼関係もないが、日中間の経済的取引は盛んになる一方だ(冷戦時代の米ソ間でさえ経済的取引は行われていた)。要するに経済のマクロ的現象に、「政府間の仲の良さ」などというものが影響する余地など殆んどない。仮にブッシュと小泉が決定的に仲違いし、アメリカが全面的禁輸を行ったとしよう。おそらく日本もそれに対して報復措置を取るので、日米間の経済的取引は全面的にストップすることになるだろう。けれども現在の両国間の経済的相互依存の強さの度合いからみれば、それは「共倒れ」を招く「自爆行為」でしかなく、メリットなど何もない。だから、敵対関係に入ったとしても経済には何の影響もない可能性すらある。
次にこの繁栄を「安全保障」の意味にとってみる。とりあえず当面検討すべき対象は北朝鮮や中国といったところだろう。けれども北朝鮮は国是として「反米」を掲げるがゆえに日米間の距離が離れることで関係が逆に改善する可能性がある。更に日朝間の交易を拡大することで北朝鮮経済の日本経済に対する依存度を深め、経済の面から安全保障を実現させることも絶対に不可能とは思われない。中国に関してもそう。いまや重要な交易相手である日本を攻撃することは、少なくとも当面はありそうには思われない。そしてこの戦略にはアメリカが噛んでくる余地はない。
結局、国際政治の素人の僕から見ても、岡崎的立場は、別にきちんとした知識(特に経済に関する)に基づいたものではなく、「まあ長いものには巻かれてれば間違いはないだろう」的な、何の根拠もない思い込みに基づいているとしか思えないほど、雑なロジックでしか構成されていない。「親米」ではあっても「現実的」でもないし(どちらかというと妄想)、「国益追求」とも特に関係がないと言いうるのだ。
話がだいぶ逸れた。要するに、「反米か/親米か」でも何でも良いんだけど、それ自体全く恣意的な枠組み、問いの切り口に縛られて、議論した気になるのはそれは違うんじゃないの、ということだ。もちろん僕たちは現実を、何であれある枠組みでもって捉えるしかないというのが例え事実だとしても、その恣意性、限界についてはもっと自覚的であっていい。
まあ「あいつらは反米=反日だ」と主張するのに意味があると本気で思ってやってる人たちもいるんだろうし、積極的に止めさせようとは思わないけど、それに釣られてちゃまずいよなあ、とは思う。
(追記1)
岡崎氏の主宰する研究所のサイト内のページ「日本の対米支援を巡って」の特別研究員佐藤守氏のコメント「勝ち組みにつくほうがわが国にとって『国益』であることは間違いありません。第一、自国の安全保障を米国に依存しておきながら、自国だけが貿易でうまい汁を吸おうと考えるのは,虫が良すぎます。」というのはまさに経済学に無知な人にありがちな意見。小宮隆太郎「貿易黒字・赤字の経済学」くらい読むとか、少しは経済学に触れてからモノを言うように。でもこういう人たちほど「リアリスト」を名乗るんだよなあ…笑えない。
(追記2)
「電氣アジール日録」の7/20のEntryをメモ。

