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2004年08月04日

スポーツは純粋であるべき?

Thinking

前回のEntryの補足。

注意深く読んでもらえば分かるとは思うのだけれども、僕は「スポーツは政治やイデオロギーとは切り離されるべき派(以下、分離派とする)」では必ずしもない。それにはいくつかの理由がある。

まず一点目は、そもそもほとんどのスポーツはナショナリズムに寄りかからないと成り立たない、という現実を「分離派」は見逃している、ということ(つまりそれは現実的に不可能)。多くの競技が自らを、何とか(「国と国」というのが前面に出る)オリンピックの正式種目に、と考えるのは、そうでもない限り誰も見向きもしないからだ。競技者もそう。オリンピックでは人気種目の柔道すら、普段の大会は閑散としていて、何の緊張感もないのだ(その為最近は演出に凝りだしたらしい)。

それから二点目は「スポーツと政治の分離」というスローガンは、僕の解釈では、「権力側」に対するものであって「市民」に対するものではない、ということだ。「権力側」がスポーツを国威発揚に利用し、それによって自らの政治目的のために国民の動員を図る、ということが歴史上繰り返されてきたことは事実だ。このスローガンはそれに対する警戒として生まれてきたものなんじゃないだろうか。

よく考えてみて欲しい。他の観戦者や競技の邪魔にならない限り、誰がどんな動機で、どのように観戦すべきか、などということはそもそも自由に決まっている。サッカーや野球ではブーイングだって許されている。

他人が、自身のイデオロギーや政治的立場を、競技者に仮託して観戦することに対して、「それは僕が不快になるから止めてくれ」というのは、単なるエゴでしかない。僕たちに、中国人がいかなる理由でサッカーを観に来るかに関して、「純粋にスポーツ観戦の為だけに来い」などと規制する権利などありはしない。「僕たちはそうしているのだから、君たちもそうしてくれ」というのも単なる押し付け、越権行為に過ぎない。

要するに、「分離派」のスローガンは権力の監視、という観点を離れれば、それは自分たちのある意味での主義・思想を表現したものでしかない。従ってそれを採用するのは自由だが、他者に押し付けることは出来ない。

蛇足ではあるけれども(仮に今回、中国人が政治的理由でブーイングをしていたとして)、「分離派」のスローガンを金科玉条のごとく奉り、その基準に基づいて中国人サポーターを断罪する主張を行うことも、僕はまた認める。ただ、中国人サポーターはその基準を「盛り上がりに水を注すつまらないもの」、「窮屈な観戦方法」として歯牙にもかけることはないだろうけど。

面白いのは、「分離派」の一部も薄々はその「窮屈さ」を自覚している、ということだ。だって、今回の件で「中国人サポーターが政治的なものを前面に出すなら、自分だって黙っちゃいない」と噴きあがる人たちは割と多かったから。最初から素直になれば良いのに。「政治的な観点で、そもそも中国が嫌いだ」だから「日本代表に彼等を倒してもらって溜飲を下げたい」って(ちなみにそれで「溜飲が下げられる」人ってどうよ?という話にはここでは踏み込まないでおく)。

そういうのはある意味不健全に僕には思える。「透明・中立・純粋」という価値がここでも不当に、盲目的に重んじられているというのが背景にあるのかも。僕は特に大事なもんでもないと思うんだけど、何故か世間では色んなところでそれこそが「絶対的な価値」みたいに、抑圧的に機能してるのが気持ち悪い(ちなみにここら辺のことは、先週の「マル激」、森達也・宮台真司会談でも、マスコミに関する話題の中で出てたっけ)。

(追記1)
もちろん元々「ヘイト」丸出しの差別主義者が、「スポーツは純粋であるべき」という(一見多くの人たちが否定しがたいような)スローガンをダシにして、単に差別的主張を行っているという例(前回のEntryで念頭にあったのはこれ)もある(こっちの方が多いかも)。

(追記2)
BonvoyageさんのEntryをクリップ。そのうち「ベタ」が「ネタ」になるでしょう(ちょっと要約が乱暴すぎるでしょうか?)、という御意見は僕も同意。それから、内田樹先生のこのEntryについても、「応援」の意味でクリップ&トラックバックを送っておきます。中国人サポーターが政治的意識を持ってサッカーを観ることは異常でもなんでもないと僕も思いますので。

(追記3)
ある行為について、自分が覚えた個人的な不快感を、「世界中のスポーツファン(或いは「国際社会」とか)が呆れるような行為」というようにすり替えて、正当化を図ろうとするのはいいかげんに止めたほうが良いと思う。

そもそもそんな人たちは何処にも「存在しない」のだから。

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