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2005年01月04日

性犯罪者の再犯率?

Thinking

なんばさんのBlog「児童小銃」から奈良幼児殺害事件関連のEntry「macska dot org」のEntryを読ませて頂き、勉強になることしきり。で、僕もなんばさんのところにコメントさせていただいたりしてるわけだけど、それにしてもマスコミの出す数字はいいかげんだ。

僕が見たところでは、1月2日付「関口宏のサンデーモーニング」で「性犯罪者の再犯率約41%(警察庁調べ)」という数字を出していた。上記のEntryを読んだばかりだったので、ちょっと高すぎはしないかと思い、念の為TBS視聴者センターに確認することにした。質問は「この41%の元になった資料は何か」というもの。担当者の人によると警察庁のHPの平成15年度の統計データ(pdfファイル)から算出したものだという。具体的には表43「罪種別 初犯者・再犯者別」の「公然わいせつ」の欄の「総数1,456」の内「再犯者611」から出したそうだ。

ただこの「再犯者」は、なんばさんのところでの僕のコメントに続いて「通ほりすがり」さんが分析してくれているように、性犯罪以外の前科も全て一緒くたにした数なので、「過去に性犯罪に手を染めた人間は、再び性犯罪を犯しがちだ」という文脈でこの数字を用いるのは極めて不適当だと思う。実際、番組で「41%」の数字は、過去に性犯罪を犯した者を監視するミーガン法を意識した内容のフリップに書かれていたんだから。

ちなみに同じpdfファイルの表44「罪種別 前科者数別」のところで、前科者総数から「同一罪種前科なし」、つまり「前科はあるけどそれは性犯罪関連ではない」の数を引いた数字で計算すると、「公然わいせつ」では約16%、「わいせつ」全体で見ると約12%となり、これは他の犯罪と比べても決して高いとは言えない。このことについては一応、質問状としてメールを番組宛てに送っておいた(反応がくるかどうかは良く分からないけど)。

ただ、「サンデーモーニング」はまだマシ。ほんとうに酷いところがあった。僕のこの話を聞いていた知り合い(仮にT君としておきます)が、先ほどテレビ朝日の「ワイドスクランブル」を見ていたところ「再犯率50%強」という数字を挙げていたらしいのだ。ギョッとして彼もテレビ朝日に問い合わせたんだけど、その返事がまたふるっている。「これは警察庁から発表があった数字で、疑問があったら警察庁に問い合わせてくれ」だったそうだ。

T君も「あやふやな数字が一人歩きするのはまずいと思わないのか。せめて分母が何で分子は何かぐらいは調べないのか」と食い下がるも、番組側は「警察庁の発表をそのまま報道しただけだから分からない」の一点張り。挙句の果てには「発表を鵜呑みにして何が悪い」とでも言わんばかりの勢いだったそうだ。それを「ジャーナリズムの自殺」と言うのではないですか?テレビ朝日さん。

さすがにカチンときたT君が、警察庁に「本当にそういう発表が(このpdfファイル以外に)あったのか」と問い合わせをした結果、「(このpdfファイル以外)数字は出していないので(テレビ朝日が)独自に計算されたのではないですか?」(警察庁広報課)とのこと。なんだ、話が違うじゃないか。

で、T君、再び「警察庁は知らないと言ってますけど」とテレビ朝日に電話したところ、今度はもう支離滅裂。「あーそうですか、でもこちらとしてはわかりません」、「番組の中身についてはお答えできません(さっきは警察庁発表がソースだって一応答えてたのに、テレビ朝日では数分の内に規則が変わるらしい)」、「今度からちゃんとその点について掘り下げた番組を作るようにします(いや、数字の根拠は何?って当たり前のこと聞いてるだけなんだけど…要するに根拠レスってことですか)」、「(逆ギレ気味に)こういうことに興味があるんですか?(あなた方も興味があるから数字に注目して報道したんでしょうに)」といった感じで、話にならなかったそうだ(T君は完全に頭にきた様で、「BPO(放送倫理・番組向上機構)」に抗議したところ、この件はきちんと報告書にまとめてテレビ朝日に伝えるとのことだったそうです)。

煽る側にいる人たちの中にこういう人間がいるということだけは強く自覚しておきたい。

というわけで、明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしく。

(追記1)
漫画家山咲梅太郎さんのBlogよりトラックバックをもらったんだけど、強烈な既視感(既聴感?)に襲われました。T君と全く同じ対応を受けてます。言い訳もそっくり。

疲れきったので、TV朝日には電話しませんでした。なんかまた逆ギレされそうだし。
ええ、逆ギレされるでしょうね、確実に。

(追記2)
「ミーガン法のまとめ @ macska dot org」というまとめサイトをmacskaさんが公開されてます。議論の出発点としては必読です。本当はこういう叩き台はまずマスメディアが提示して見せるべきなんですよね。遺族や、容疑者の住んでいた地域の親御さんが感情的になるのは仕方ないとは思いますが、冷静に議論すべき側まで感情論を語ってるのには、呆れるばかり。せめて「ミーガン法」をグーグルで検索した時にmacskaさんのサイトが少しでも上位にくるようにとの願いも込めてリンクを張っておきます。

(関連Entry)
(続)性犯罪者の再犯率?

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Comment (8)

rna:

同じ表が元ネタなら50%というのは強姦の「再犯者率」かもしれません。いずれにせよいいかげんな話です…

deadletter:

(表43による)「強姦」の再犯者率は正確には「49.63%」で「50%強」とは言えないと思うんですよね。T君によると、警察庁の方も「50%強という数字は、どうやって出したのか分からない」と言ってたそうですし。何なんでしょうね、いったい。

おーつか:

はじめまして。
GJ!GJ!

satou:

41%の方はスポーツ新聞が元ネタ(?)かもしれません。
奈良の事件の被疑者が逮捕された翌日か翌々日あたりのスポーツ新聞に巨大な字で「41%」と書かれているのをテレビで紹介していました。

satou:

連続投稿失礼します。前述のスポーツ新聞の記事はグーグル検索では見つかりませんでしたが、12月30日の東京新聞が「警察庁によると、全国の強制わいせつ事件被疑者の再犯率は約41%(昨年)」との記事を掲載していました。

http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20041231/mng_____kakushin000.shtml

deadletter:

おーつかさん、はじめまして。
そうですね。T君GJ!ですよね。普段はとても忙しい人ですし、こういうこともしたことがない人なんですが。それだけによほど番組側の対応が頭にきたんじゃないでしょうか。

satouさん。
「サンデーモーニング」は、僕が確認したところ元ネタ(分母と分子を含めて)を教えてくれたので、まがりなりにも自分のところで出したのかもしれません。でもそれ以外の多くのメディアで、仮に「他のメディアでこういう数字(例えば41%)が使われてるから、まあそれ使っておけばいいか」みたいな怠惰・横並び意識・無責任体質で、根拠レスな伝言ゲームがなされているとしたら、それが一番の問題ですね。だいたい、他社の記事をそのまま裏も取らずに紹介するって「ジャーナリズム」じゃないですよね。

aozora:

通りすがりなのですが・・・
昨年のこちら
http://www.yomiuri.co.jp/features/nara/200412/na20041231_02.htm

■50%超が再犯

 警察庁によると、強姦(ごうかん)と強制わいせつで検挙された容疑者のうち、何らかの前歴を持つ者の割合(再犯率)はここ数年、50%を超え、30%台後半にとどまっている他の刑法犯とは大きな開きがある。


 よく読むと「何らかの前歴を持つ者の割合(再犯率) と書いてますが、以下の記事でも性犯罪の前歴を持つ例だけ取り上げているし、ずっと下の方でミーガン法を持ち出していて、統計を意図的に混同させているような感じがします。
 テレビでどのように話したのか分かりませんが、「性犯罪の再犯率が50%というわけじゃない」と明言しなければ、50%の再犯率は性犯罪の再犯率としてインプットさせる可能性も十分あると思いました。

deadletter:

aozoraさん。

少し話は逸れますが、僕は「マスコミの無責任体質が問題かも」と以前コメントしました。が、この読売の記事は「50%強」の元ネタでは、という見方もあるので、今回はそれとは別の角度からコメントしたいと思います。

http://www.ken1.tv/message/message040303.html

鳥インフルエンザ騒動の時の浅田農産の件でジャーナリストの下村健一は以下のように述べていました。

<失敗者を《処罰する》のは、監督機関(場合によっては司法)の仕事であって、メディアの役割分担では断じて無い。そこを勘違いして、こうした会見の場で"正義の味方"ヅラをして居丈高に責め立てる記者は、後を絶たない。メディアは、失敗者から《教訓を聞き出す》ことが、仕事ではないのか。社会は、失敗者に学ぶべきなのだ。「なぜ失敗したのか」を、土下座して頼んででも教えていただき、その情報を社会に共有してもらうことこそが、メディアの使命ではないのか。>

今回の件も読売、或いはマスコミには単純な「正義」があるのかもしれません(確かに忌むべき事件ですから)。ただ彼らの役割は単に「正義」の側に立つことではありません(もちろん正義も大切なんですが)。ポリティカルコレクトネスを判断するだけでは、ダメなのだと思います。

性犯罪を断罪すること、失敗者を糾弾することに過剰に傾倒するあまり、ヒステリックな議論しか出来ないというのはやはり問題がある。どうしたら防げるのか、真に合理的・有効的な政策を論じることが、例えば「それでは生ぬるすぎる」という感情的な世論と衝突することはままありえます。その時にPCにだけ配慮していたのでは道を誤ってしまいかねない。そこでメディアの質が試されるのだと思います。

この記事にもおそらく「性犯罪は憎むべきもの」→「断固たる処置をとるべし」という記者個人の感情、もしくはPCへの配慮が背景にあるのでしょう。ですが「断固たる処置を」というのが念頭に来た時点で、事実上結論はミーガン法以外に無くなってしまいますし、実はこの記事を書いた記者さんも、結論が先にあってそれに合うデータを後からくっつけたという感じなのではないでしょうか。だとすればジャーナリストとしてはナイーブで未成熟と言われても仕方がないでしょうね。

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