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2005年05月16日

50年前の憲法論議

Memo

今月号の「論座」は憲法特集。僕もスワンさんと同様に長谷部恭男、井上達夫、小熊英二という執筆陣に惹かれて買って読んでみた。

論座長谷部さんは「立憲主義」という枠組みから自民党の改憲論を論じ、井上さんは改憲派に関しては「押し付け論」に潜むダブルスタンダードを、護憲派に関しては「絶対平和主義の不徹底」(=エゴイズム)を共に厳しく批判し、小熊さんは改憲論議が現在盛り上がりを見せる背景について分析をしていた。

その中で今回僕がちょっと興味を持ったのが小熊さんが言及していた「自民党の50年前の改憲論」についてだ。

50年前の自民党の改憲試案(おそらく「広瀬試案」だと思われる)には、「天皇を元首にする」、「基本的人権(表現、結社の自由など)の制限」、「9条の改正」、「家族の尊重」、「参議院を政府からの推薦議員によって構成する」、「都道府県知事の公選制の廃止」などが盛り込まれていたそうだ。

現在の自民党案と似通っている部分も多いが、「参議院」や「地方自治」の捉え方も合わせて考えれば、より「戦前回帰志向」が強い。で、この改憲案はどう捉えられていたのか。1957年5月3日の朝日、毎日、読売、産経の社説から抜粋させて頂くとしましょう。

まず朝日新聞。

最近の広瀬試案は、参議院重視の特徴をもちながらも、同一方向の改正案を集大成した感がある。天皇の地位を高め、「日本国の首位にあり 日本国を代表する」として、元首的性格をもたせ、国民の基本的人権については、「一定の条件の下では法律をもってする規制に服する義務がある」として、その一般的限界を明示し、「婚姻または血縁に基礎をおく生活協同体」を「家」とし、国に家を保護する責務を負わせている。

…(中略)日本国憲法十年の歩みは、少なくともその根本原理である平和主義、民主主義の一線だけは守り抜いてきたことを、否定することはできない。現行憲法の諸条項に対し、その不備、その欠陥を指摘して、改正を提唱することはともかく、それらの改正論が、民主主義、平和主義の根底をゆり動かす結果を来すならば、それはむしろ改悪であり、危険ともいえよう。(「憲法十年の歩み」)

次に毎日新聞。
国会の勢力関係からいって、憲法改正は急ぐことのできない客観的な条件の下にある。そういう時だからこそ二つの陣営は憲法を冷静に検討すべきであり、国民全部に理解させる努力が必要である。憲法問題はこぶしをふりあげて興奮するよりも、冷静に国の将来や社会のあり方を考えて判断すべきだ。(「今こそ冷静に憲法を考えよう」)
お次は読売新聞。
改憲論の代表的な具体的表現と見るべき広瀬試案を見ても、天皇を「国民統合の中心」として国民の「首位」であると規定したり、参議院を超党派的なものとして、推薦制度を付加するものに改めようとしたり、家族制度の国家的保護を求める条章を入れるなど、現行憲法には見られない国家主義的要素が少なからず加わっている。特に改正論の発端となった防衛問題については、自衛軍を保持することとし、しかも一定の条件における海外出兵までも認めている。広瀬案にも総理大臣を「国務委員長」に、大臣を「国務委員」に改めるなど何人にもうなずける点もあるが、全体として平和主義と民主主義を強調している現行憲法から見れば少なからず今日の時勢に逆行しているかの観がある。(「現行憲法の精神は強く守れ」)
最後は産経新聞。
改正論の中でも、天皇制や家族制度を昔に返せというような反動説は、もとより問題外である。現行憲法に如何なる欠点があるにしても、個人の自由とか民主政治とかの点においては、日本国民の大多数が満足していることは疑いなく、戦後の急造にしては大体よく出来ているというて差支えあるまい。そこで擁護論者中には、この民主体制をくずすから改正はいけないと説くものもあるようだが、しかし民主政治において一旦与えられたものは容易に奪われない、という原則を承知している改正論者ならば、この点を反動化しようと企てる筈もなかろう。

改正と擁護の最大の論点は、いうまでもなく第九条の戦争放棄の条項と、国家固有の自衛権とを如何に調和させるかの一事である。しかもこれこそ侵略戦争の敗北による日本の詫び証文ともいうべき全然一時的の産物である以上、守り得る独立国家の憲法としては、当然表現を改めなければならない。国家が常に虚言や詭弁を弄しなければ、立って行けないような憲法であってはならぬからである。(「憲法調査会を活用せよ」)

産経は「9条の改正」には賛意を表しているものの、それ以外については毎日を除く3紙とも(毎日には具体的言及が無し)、改憲案については全体主義的、国家主義的ということで批判的。50年前の自民党案は実に不人気だったようだ。

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