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2008年03月29日

「民間であれば破綻」?

Thinking

大阪府を始めとして、財政赤字に苦しむ地方自治体について「民間であれば破綻している」と言われることが多い。「一私企業ならばとっくに倒産しているはずのところを、行政機関ということで存続を許されている」、「公務員・公的行政機関はある種の特権を持っている」というわけだ。

もちろんそれは間違っている。

行政機関というのは要するに「誰かがやらなくてはならないこと」をしている機関のことである。仮にある自治体が消滅したとしても、その仕事自体は結局「誰かがやらなくてはならない」のである。市場原理の中で存在する民間企業はそうではない。民間企業が潰れるのは畢竟「その企業が提供するサービス(仕事)が不要とされたから」である。行政機関が潰れないのは誰かが与えた既得権でも特権でもない。民間と異なり、「誰かがやらなくてはならない」仕事だからなくならないだけの話である。

例えば夕張市では行政機関の提供するサービスが縮小することによって住民の負担が増えた。それまで行政機関が担っていたものが、住民に転嫁されたからである。今まである「誰か」が担っていた、その「誰か」がいなくなれば、そこにいる住民が負担しなければならないというわけだ。

「民間ならとっくに潰れているのにある種の特権で存続している」という観点で「行政改革」を捉えてしまえば、「公務員は甘えるな(具体的には給料をカットせよとかもっとギリギリ働けとか)」という話に行き着くのはほとんど必然的ですらある(実際現在の行政改革の議論はだいたいそうなっている)。

公務員を叩くだけ叩いてカタルシスを得たいというのは自由である。その結果例えば公務員の労働待遇がワーキングプアレベルまで引き下げられたとしよう。ところでその時彼らの仕事は一体誰がやるのだろうか?彼らのしていた「誰かがやらなければならない仕事・サービス」の「質」はどのように担保するのだろうか?それらの「ツケ」は「当事者意識もまるでないまま公務員バッシングに走り、そしてカタルシスを得られてスッキリした人たち」が結局払うことになるのである。

「民間では…」というアナロジーは行政機関の持つ「誰かがやらなければならないことをする」という役割の意味を全く捉え損ねてしまう。「財政赤字」の問題にしても、行政機関の目的は「財政を黒字に持っていくこと」ではないのだから、それを加味して考えるべきだろう。*

例えば「破産者はまだ夢を語らない」と語る某知事の目指す「財政再建」が具体的にどのレベルのものなのかはっきりしないので断定的なことは言えないわけだけれども、ひたすら「民間では」と繰り返す現在彼の主張の文字面をそのまま受け取るとするならば、典型的にナイーブな考え方であるように見える。必要なのは「財政規律」の存在であって、「財政黒字」ではない。特に自治体の財政はマクロの経済状況にも大きく左右されるわけであり、それを無視した「財政再建原理主義」は、「行政機関が本質的に持つ役割」という観点から考えれば、端的に誤りであると言わざるを得ない。行政の長は民間企業の経営者ではないし、そうあるべきでもないのである。

*ちなみに民間企業は「提供するサービスが必要とされる」と「利益が出る」ことが必然的に結びついている為、その目的は「利益を出すこと=赤字を出さないこと」であると言い切って構わない。

(追記)
普段はあまりしないのですけれどもはてなブックマークへのお答え

むしろやらなくて良いことをやり過ぎているから、叩かれているのでは? 本来やらなきゃならない事だけをやっていれば、倒産状態にはならなかったはず。
(Snailさん)
本当にそうでしょうか?もしそうであるというならきちんと「財務分析」をして頂きたく思います。もちろん僕も「無駄使いの結果厳しい財政赤字に陥った」という説を頭から否定するものではありません。けれどもマクロの経済状況が悪化した場合、通常行政機関の財政赤字は拡大します。逆にそれが改善した場合税収も増えますし、雇用関連の福祉予算への支出が自然と減少したりすることもあって、財政は健全化へ向かいます。例えば大阪府の場合はどうなのでしょうか?マクロの経済状況では説明が全くつかないほどの「ムダ遣い」が今の財政状況を招いたのでしょうか?(ちなみに当Blogでは以前「ムダ」の概念についての議論もしていますので参照頂ければ幸いです)

僕が今行われている公務員バッシングに対して違和感を持つのは、それをする人たちがそういった客観的・実証的分析を全くしないまま、単に感情的にそれを行っているように見えるからです。叩くなら、「~だから叩かれるのでは?」などと口先だけで適当なことを言わずにきちんと根拠に基づいて批判をなさったらいかがでしょうか?まさか「カラーコピー」や「タバコ休憩」があったから大阪府が財政赤字に陥ったとは思わないのでしょう?

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