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「新古書店悪玉論」論駁 ― ブックオフに欲しい本はない ― 「Diary」(2003.2.15)で、出版不況の原因では「活字離れ」の深刻化が大きい、ということに少し触れたのだけれども、最近ちょくちょくブックオフを利用する僕としては、出版不況→「新古書店悪玉論」というロジックについても、少し触れておこうと思う。 始めに敢えて言い切っておきたい。ブックオフに代表される新古書店は出版不況とはほとんど関係がない。何故ならブックオフには欲しい本がないからだ。 この言い方は少し乱暴に過ぎると思われるかもしれない。「お前の」本の趣味が特殊なだけで、「お前の」欲しい本がないだけだろう、と。でもそうじゃない。「一般的に言って」そうなのだ。 ブックオフに通う人なら気づく人も多いかもしれない。「ブックオフには今現在のベストセラーが並ばない」のだ。 僕の家の近くには何と三軒のブックオフがあるので、割と高い頻度で立ち寄るのだけれども、ちなみに僕は一度として「海辺のカフカ」も「ハリーポッター」も見た事がない。あれだけ出回っているのだから、少しは流れてきても良さそうなものなのに。もちろん入荷してもすぐに売れてしまう為に、たまたま僕の行った時にはなかった、という考え方も出来る。 それならば、だ。僕は一体「海辺のカフカ」をブックオフで手に入れる為に、一体週何回、或いはどれ位の期間通い続ければ良いのだろうか?そこまで時間的コストをかけなければ、手に入らない、或いはそうまでしても手に入る保証すらないブックオフで、「海辺のカフカ」を買おうという人がどれだけいるだろう。時間的制約のあるまともな社会生活を営んでいる人ならば、新刊で買おうとするだろうし、そして多分それが最も合理的な選択のはずだ。 最も量的に流通しているはずのベストセラーが並ばないという事は、その他の本も推して知るべし、というところだ。あなたが特定の「ベストセラーでもない本」を安く手に入れようという目的で、ブックオフに行っても「希望通りのまさにその本」が見つかる可能性はほとんどない。もし本当にその本を読みたいのなら、ケチな期待は捨てて、さっさと普通の書店に行って注文するべきだ。僕はそうする。 じゃあマンガの場合はどうだろう。 マンガの場合、ポイントはそれが「複数巻」だということだ。僕の見る限り、ブックオフに「全巻コンプリート」で並んでいるマンガはほとんどない。だからあるマンガを安く手に入れようと行っても、必ず「歯抜け」状態で買わされることになる。じゃあその「抜けた」ところは?またブックオフに通い詰めて、「抜けた巻」が並ぶのを辛抱強く待つべきだろうか。 僕はそうは思わない。「全何十巻」の人気マンガの自分の持っていない部分が都合良く手に入る保証などどこにもないし、「巻数」の少ないマイナーなマンガならそもそも並ばないかもしれないのだ。 もちろんここでも「単行本」と同じ現象はある。人気マンガほど店頭には並びにくいし、「歯抜け」の率も高い。 要するに、ブックオフでの買い物は金銭的コストは低いがその代わり時間的コストが、しかも「無視出来るレベルではない」ほど、かかってしまうのだ。この認識は神保町で古本屋通いをしていた僕には、ほとんど「常識」の部類に属する。 学生の身分では何千円もする学術書は頭の痛い問題だ。だから僕はそれを安く手に入れる為に専門古書店の多い神保町へと足繁く通った。けれども、だ。僕はそこで「まさにその時欲しかった本を安く良い状態で手に入れた」という経験を殆んどしたことがない。従って、結局本当に読みたい本は新刊で買わざるをえなかった。 ちなみに、古本屋巡りを趣味とする、知り合いは「当時欲しかったまさにその本」を古本屋で見つけた時、嬉しさのあまり僕に電話をかけてきたほどだ。もちろんこれは極端かもしれない。でも古本屋巡りが「欲しい本を買う」という点で「恐ろしく非効率的」なのは事実なのだ。 じゃあ、欲しい本が手に入らないのであれば、一体ブックオフのメリットとは何なのだろうか。 それは一言で言えば「新しい出会い」ということになる。 僕はブックオフでは「目下欲しい本」は探さない。「どんな本があるかな」と眺めながら気になったのをパラパラめくる。そこでもし面白そうだと思えば買えばいいし、当てが外れれば棚に戻す。ちなみにブックオフには「話題の最新作」は殆んどないけど、「以前に出た、旬を外した本」ならある。でももしそれを気に入れば、「この作家の最新作を読んでみようかな」という気にもなる。そういう「出会いの場」としてなら、ブックオフは凄く役に立つ。 マンガも同じ。立ち読みして面白かったら買えば良いし、「歯抜け」であってもその巻は一般書店で注文するか買えばいい。 つまりブックオフ(古本屋)は新しい需要(出会い)の掘り起こしに役に立つ、一般の書店の補完勢力と言えるわけで、そもそもそれでしかありえない。今までも一般書店と古本屋は棲み分けてきたし、それはこれからも変わらない。 まとめよう。出版不況を「新古書店」のせいにして批判する人たちは、殆んど「古本屋通い」をしたことのない人たちだ。おそらく学生の時にまともな本一つも読もうとも、買おうともしなかったのだろう。古本屋には欲しい本などない。そこには「新しい出会い」があるだけなのだ。 ※ ちなみに。ブックオフの本はきれいな状態だから「新古書」として、既存の古本屋と区別しようという人が多いんだけど、ブックオフでも汚い本は汚いし、既存の古本屋にも「新刊」と見まごうばかりの良い状態の本はいくらでもあります。その点で区別するのは全くのアンフェアです。 (2/25/2003) |
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